健康な人であっても、年齢とともに腎臓の働きは緩やかに低下していきます。老化現象ともいえるこのような変化とは対照的に、腎機能が生理的なスピードを超えて悪化する状態を慢性腎臓病(CKD)と呼びます。その患者さんは日本全国で約1,480万人(成人の7~8人に1人)にもおよぶことから、糖尿病や高血圧とならぶ現代の国民病といっても過言ではありません。 CKDは、腎不全のみならず、命を脅かす心筋梗塞や心不全などの発症リスクを著しく高めます。したがって、その重症化を予防することは、患者さんの生活の質を向上させ、同時に膨らみ続ける医療費を抑制することにもつながるでしょう。そこで、令和6年度の診療報酬改定において、慢性腎臓病透析予防指導管理料が新設されました。これにより、糖尿病性腎症に加えて、高齢化社会での急増が予測される腎硬化症を含む、すべてのCKDへの対策が一層進むと期待されています。 当院では、軽症から末期腎不全に至るまで、あらゆるステージのCKDに対応できる体制を整えています。すなわち、経験豊富な専門職(医師・看護師・管理栄養士・薬剤師・理学療法士)からなる「透析予防診療チーム」を編成し、メンバー全員で一人ひとりの患者さんに寄り添い、療養生活を支援しています。以下のように、その活動は多岐にわたっています。 ① 診療ガイドライン等に基づいた病態の評価、および治療方針の検討 ② 塩分や蛋白質の摂取制限を中心とした栄養指導 ③ 腎機能を悪化させないための服薬指導 ④ 糖尿病や高血圧を改善するための運動指導 ⑤ 教育入院による総合的な療養指導 ⑥ 糖尿病・腎臓病教室の開催 優れた薬が開発されたこともあって、CKDの治療成績は昔に比べてずいぶん良くなりました。とはいっても、人工透析を回避するために、早期発見・早期治療が重要であることに変わりはありません。CKDには自覚症状がないことが多いため、職場の健康診断などでタンパク尿がみつかったり、血液検査で腎機能の低下を指摘されたりしたときは、まず一度ご相談ください。 |